「アートのコツ」 は、アートホリックな方々にアートを楽しむコツを教えていただくコーナーです。今回は、あいちトリエンナーレ サポーターズクラブの上池直美さんに「トリエンナーレをサポートするコツ」を教えていただきました。
私はあいちトリエンナーレのサポーターズクラブで「トリ勉」(トリエンナーレ勉強会)という活動を手伝っています。普段は会社勤めをしながら、よくギャラリーや劇場に出没し、美術やダンスを鑑賞するひとりです。2年ほど前からあいちトリエンナーレウォッチャーを自称していましたが、観察のためイベントなどを覗きにいくうちにミイラ取りがミイラになっていました。トリエンナーレとサポーターズクラブが、今まで潜伏していたアートファンや過去に仕事や勉強でアートに関わりながら離れていた人などをおびき寄せ(アート好きホイホイ)、このお祭りで初めてアートに興味を持った人もそこに気軽に加わる様子を見ていて、アートを後押しするプラットフォームとして、ここから新しい流れが生まれるかもしれないという可能性に抗えなかったのです。
「トリ勉」はサポーターズクラブの活動のひとつで、一般の人たちが企画・運営の中心です。あいちトリエンナーレの会期中は参加作品と作家について掘り下げる勉強会や美術ライターによるレビュー講座を実施しました。会期後も、キュレーター陣などをゲストに招いてトリエンナーレを振り返りつつ日常的にアートに親しむための導入となるような講座や、ギャラリーツアーを企画し、この3月末で通算15回を数えます。
また、最近完成した「みんなのあいトリレビュー」(http://d.hatena.ne.jp/tori_ben/)というサイトは、あいちトリエンナーレ2010の出展・上演作品についてトリ勉参加者内外から140字(以内)のレビューを募ってまとめたものです。集まった340本を超えるレビューは鑑賞体験の貴重な記録であり、多様な感想から作品の姿が立ち上ってくるようです。
トリ勉スタッフはそれぞれが職業を持っているので、忙しさで時にやつれたりもしていますが、喜々としてこうした企画のテーマや構成決め、ゲストとの交渉などを進めています。トリ勉に参加する人たちの意欲も高く、カジュアルな雰囲気の中で活発に発言が飛び交います。それに応えるようにどのゲストも全力投球かつ率直。その熱意に頭が下がります。またスタッフ・参加者共に、元からアートに親しんでいた人と新たなアートファンでは時として視点が異なり、異種格闘技戦的面白さが発生することがあります。作品が提示するものだけでなく、それを媒介として異なる価値観と出会うことで双方の思考が開かれていく。トリ勉は「アートのコツ」の宝庫かもしれません。
建畠晢芸術監督の言葉を借りれば、昨年「アブソリュートビギナーズ(絶対的な初心者)」として創造の現場に立ち会った鑑賞者たちによるこうした営み。それが今後どうつながっていくのか楽しみにしながら活動しています。
上池直美 あいちトリエンナーレ サポーターズクラブ「トリ勉」メンバー
アートのコツライブラリー
2011年3月14日月曜日
2010年12月16日木曜日
アートを身近にするコツ
「アートのコツ」 は、アートホリックな方々にアートを楽しむコツを教えていただくコーナーです。今回は、ワンピース倶楽部名古屋支部長の山本真寿美さんに「アートを身近にするコツ」を教えていただきました。
まずは、買ってみることだと思います。
もちろん、美術館へ行くことも、ギャラリーへ行くことも大切なことですが、たくさんの美術館やギャラリーに足を運ぶことと、買ってみることでは、アートを身近に感じられることの度合いが違うのではないかと思います。
まず、鑑賞の仕方が変わってきます。何となく見るのと、買うつもりで見るのでは、鑑賞の気合の入れ方が変わってきます。そして、気合を入れて鑑賞した後、自分のお金で買ってみると、嫌でも身近に感じられると思います。
作品への愛着も湧きますし、作家さんへの愛着も湧くと思いますし、ギャラリーへの愛着も湧くと思います。購入した作品を、どこに飾ろうかと思い悩むのも楽しみの一つ。飾ったら誰かに披露するのも楽しみの一つ、別の場所で作家さんの作品を見つけるのも楽しみの一つ、作家さんの新作に期待するのも楽しみの一つ。買ってみることで、どんどん楽しみが広がっていきます。
私が名古屋支部長を務めるワンピース倶楽部は、こんな感じで買うという行為を目的の一つとして、アートを楽しみたい、身近にしたいと思う人達が集まる倶楽部です。
特に専門知識がある人たちの集まりではありません。専門知識がなくたって楽しめるのです。ワンピースの意味は、洋服でもなく、漫画でもなく、1作品=ワンピースの意味です。
1年間で最低ワンピースの作品を買いましょう、そして、そのお気に入りのワンピースを見つけるために、ギャラリー巡りや美術館巡りなどを積極的にしましょうというルールのもと、アートを楽しんでします。もう一つ面白いルールは、会員は一年間の成果を発表するのです。どのように発表するのかというと、各自購入した作品で展覧会を行うのです。
1年かけて探し、めぐり会った、とっておきのワンピースを展示するのはドキドキワクワクとても楽しいのです。見るだけより、買う方が、断然、楽しいと思いませんか?
アートを身近にするコツ、まずは、買ってみることだと思います。
山本真寿美/ワンピース倶楽部名古屋支部長
ワンピース倶楽部ウェブサイト http://www.one-piece-club.jp/
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山本真寿美
2010年9月16日木曜日
まちとアートをつなぐコツ
「アートのコツ」 は、アートホリックな方々にアートを楽しむコツを教えていただくコーナーです。今回は、錦二丁目まちの会所の名畑恵さんに「まちとアートをつなぐコツ」を教えていただきました。
「都市の祝祭」をテーマとする「あいちトリエンナーレ2010」が長者町にやってきました。長者町自らがまちとアートをつなぐ意義を発信する、「都市の祝祭」の担い手となる、そんなまちの人々の心意気は様々なプロセスから育まれてきました。中でも最も象徴的な出来事を、ここでご紹介したいと思います。
タイの美術家ナウィン・ラワンチャイクンさんとは、14人のまちの人、お一人お一人にまちでの思い出や希望を語ってもらうプロセスをご一緒しました。ここでのまちにとっての価値はなんといっても「キーパーソンの発掘」と「まちのオモイの発掘」です。相手がアーティストで外国人だからでしょうか、「その質問に何の意味があるんだ」などと相手の意図を訝しがることなく、素直にまちへのオモイを14人は語りました。アートという呼びかけでもって、人の心の奥にすっと手が届く感覚が確かにありました。語られたことの内容からは、長者町の仕事と暮らしの営みの中にある人と人のつながりがいくつもいくつも浮上してきました。
インタビューを経てそれが映像作品と絵画として表現された時、まちの本質を浮上させ生け捕りにするというエネルギーと貪欲さを感じました。なぜ本質か、一枚にレイアウトされた肖像群は、まちの眼に見える権力構造とは全く違ったものでした。毛糸屋さんや純喫茶、都市のスケールの中ではとっても小さいけれど、宝物のように大切な営みをされてきた女性二人が中央いる、沢山の眼に見えない価値を表現しています。
ナウィンさんの作品は、これだけでは終わりません。インタビューをする過程、アウトプットとしての映像・絵画表現、そして、作品をめぐって一つの場を様々な人が共有することを、全てのプロセスが作品です。まちの人は、彼の挑戦を受けとめ、ナウィンさんが作品のタイトルとした「Place of Rebirth」の意味をよみとき、作品を囲みまちの再生の気分を分かち合うパーティを自らの手で主催しました。駐車場がパーティ会場となり、星空の元、あいちトリエンナーレ関係者も、アートに興味がある人々、そして沢山のとってもうれしそうな表情のまちの人、総勢500名以上の大パーティがひらかれました。まちの包容力がナウィン表現によって最大限顕在化された出来事ではなかったかと思います。
ナウィンさんが風の人のように、大切なものをまちに残して去って行ったあと、まちは地元の祭りを考える時でも、「Place of Rebirth」のキーワードを反芻し、企画を考える場面があります。場所性としてのまちでのアート展開には、作品に終わりがないところに、決定的な価値があると思うのです。
あいちトリエンナーレがはじまって、仕事も暮らしも日常の営みがある中に、非日常的カタチがあらわれてきた今、まちの魅力があちこちで温泉のように湧き出て湯気だっているような観がします。まちで働くOLはこんなことを言いました。「いつもの日常の風景が水溜りにうつっていて、でも日常とは違って見える、そんな水溜りに思いきって飛び込んだ気持ちです。」アートは、アーティストも、まちにいる人も様々な人が、まちの価値の発見をし合う機会だと思います。
最後に、ナウィンさんはパーティのスピーチでこういいました。「みなさんの歴史から、希望がここからはじまります。そして、私の希望もここからはじまります。」まちと、「わたし」というパーソナルなオモイがつながる感覚を伝えてくれる言葉でした。「まちとアートをつなぐコツ」は、「まちと私がつながる」感覚を単純に楽しむことなのかな、と思っています。
名畑 恵
まち育て拠点「錦二丁目まちの会所」事務局長
◆錦二丁目まちの会所 http://www.kin2kaisyo.com
まちのオモイとウゴキが交差する「まち育て」の拠点です。
(愛知産業大学が開設、まちとNPOと協働して運営しています)
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まちの会所
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