アートのコツライブラリー

2011年3月14日月曜日

トリエンナーレをサポートするコツ

「アートのコツ」 は、アートホリックな方々にアートを楽しむコツを教えていただくコーナーです。今回は、あいちトリエンナーレ サポーターズクラブの上池直美さんに「トリエンナーレをサポートするコツ」を教えていただきました。

私はあいちトリエンナーレのサポーターズクラブで「トリ勉」(トリエンナーレ勉強会)という活動を手伝っています。普段は会社勤めをしながら、よくギャラリーや劇場に出没し、美術やダンスを鑑賞するひとりです。2年ほど前からあいちトリエンナーレウォッチャーを自称していましたが、観察のためイベントなどを覗きにいくうちにミイラ取りがミイラになっていました。トリエンナーレとサポーターズクラブが、今まで潜伏していたアートファンや過去に仕事や勉強でアートに関わりながら離れていた人などをおびき寄せ(アート好きホイホイ)、このお祭りで初めてアートに興味を持った人もそこに気軽に加わる様子を見ていて、アートを後押しするプラットフォームとして、ここから新しい流れが生まれるかもしれないという可能性に抗えなかったのです。

「トリ勉」はサポーターズクラブの活動のひとつで、一般の人たちが企画・運営の中心です。あいちトリエンナーレの会期中は参加作品と作家について掘り下げる勉強会や美術ライターによるレビュー講座を実施しました。会期後も、キュレーター陣などをゲストに招いてトリエンナーレを振り返りつつ日常的にアートに親しむための導入となるような講座や、ギャラリーツアーを企画し、この3月末で通算15回を数えます。

また、最近完成した「みんなのあいトリレビュー」(http://d.hatena.ne.jp/tori_ben/)というサイトは、あいちトリエンナーレ2010の出展・上演作品についてトリ勉参加者内外から140字(以内)のレビューを募ってまとめたものです。集まった340本を超えるレビューは鑑賞体験の貴重な記録であり、多様な感想から作品の姿が立ち上ってくるようです。

トリ勉スタッフはそれぞれが職業を持っているので、忙しさで時にやつれたりもしていますが、喜々としてこうした企画のテーマや構成決め、ゲストとの交渉などを進めています。トリ勉に参加する人たちの意欲も高く、カジュアルな雰囲気の中で活発に発言が飛び交います。それに応えるようにどのゲストも全力投球かつ率直。その熱意に頭が下がります。またスタッフ・参加者共に、元からアートに親しんでいた人と新たなアートファンでは時として視点が異なり、異種格闘技戦的面白さが発生することがあります。作品が提示するものだけでなく、それを媒介として異なる価値観と出会うことで双方の思考が開かれていく。トリ勉は「アートのコツ」の宝庫かもしれません。

建畠晢芸術監督の言葉を借りれば、昨年「アブソリュートビギナーズ(絶対的な初心者)」として創造の現場に立ち会った鑑賞者たちによるこうした営み。それが今後どうつながっていくのか楽しみにしながら活動しています。


上池直美 あいちトリエンナーレ サポーターズクラブ「トリ勉」メンバー