アートのコツライブラリー

2012年6月15日金曜日

アートが生まれる場をつくるコツ

「アートのコツ」はアートホリックな方々にアートを楽しむコツを教えていただくコーナーです。今回は、アーティストユニットN-markの武藤勇さんと野田利也さんに「アートが生まれる場所をつくるコツ」について教えていただきました。

八嶋有司個展"formless works"
撮影/mutoisamu
 アートホリックの田中さんにタイトルの文章を書いてと依頼されたが、コツ等なく信念か怨念のようなものがそうさせたと言うのが正直なところかもしれない。いつも「そんなモノやコトが必要だ!」と思っていたらやっていた。でもするのは大変。の繰り返しということにつきる。

 1998年、名古屋に住む僕らが感じていたのは、「僕らがリアリティを感じるアートシーン」 というものが存在しないということでした。ですから、「それ」を自分たちでつくるしかありませんでした。それが「僕らが見たいアートに出会う」という一つ のコンセプトによって「僕らの場所をつくること」でした。

 当時経験もスキルもコネクションを持たない結成当時の僕らにとっては、「場所」を持つことがそのコンセプトを実現させるための唯一思いつ いた方法でした。そこでは展覧会や、アーティストトーク、思いつきのイベントを重ねながら、若いアーティストたちと、丁寧にアートに対話をしながら作り上げていくスタイルで、自分たちなりにアートシーンというものを構築し、その実感を得るにいたりました。

 そして私達の機転となったのは具体的な場所が無くなってからでした。場所を失ってもできることは?場とは何か?できるのかできないのか?を考えながら 、できることからやってみました。最初は僕らのミーティングをカフェやギャラリーなどさまざまな場所に移しながら、オープンミーティングを開催し、さまざまな人やアーティ ストに出会いました。その活動が展開し、全国を横断したミーティングキャラバンや、カフェライン等の全国のネットワークに展開することにも繋がりました。 その後はさまざまな町や場所、プロジェクトに参加することにつながり、多くの経験やネットワークを生み出しました。それらがさまざまなアートプロジェクトに展開していきました。

 今回のN-MARK B1も、あいちトリエンナーレの会場となり、それを機にオープンしたアートラボあいちの運営にN-markの武藤が個人的に関わる中で築いた人脈や信頼関係で実現しました。N-markが少しずつ培ってきたネットワークや人脈がこの新しいアートの拠点、長者町トランジットビルに集まりました。

 アートだけではなくクリエイターや、カフェ、古書店、建築事務所などが入居するビルの誕生と共に新しいN-markの場所がオープンしました。ここはN-markが主催するときには「N-MARK B1」として、その他の場合には「トランジットギャラリー」として運営する、シェアギャラリーです。N-markと しては、これまで通りブレなく「僕らが見たいアート」を展開していきます。同時にこのビルの入居者や、近隣であるアートラボあいち、エビスアートラボ、ス タンディングパインや、来年開催されるあいちトリエンナーレなどとリンクしながら現在の名古屋のアートシーンをより盛り上げていけたらと考えています。
 
N-mark
1998 年より名古屋を中心にアートシーンを盛り上げるための活動として、野田利也、武藤勇の2 人を中心に、現代美術の展覧会やイベント、アートスペースの企画・運営、野外展、全国のオルタナティブスペースを横断するミーティングキャラバンなど、さまざまなアートプロジェクトやサポート事業を展開。今後はさまざまなアーティストやクリエイターが入居する「長者町トランジットビル」のソフトランディングや、同ビルにオープンしたギャラリー運営などを拠点に、さまざまな人やチームを巻き込みながらアートプロジェクトを展開していく。
 
ユニークなアーティストのプレゼンテーションを随時受け付け中。
 
隔週でジャンル横断的なゲストをお迎えしてのインタビュープログラム「FRIDAY NIGHT TALK SHOW 世界の塔の下から」をUSTREAMにて配信中。