アートのコツライブラリー

2009年9月15日火曜日

日常にアートを見つけるコツ


「アートのコツ」は、アートホリックな方々にアートを楽しむコツを教えていただくコーナーです。今回は、フリーペーパー『アートラペル』発行人の原田京子さんに「日常にアートを見つけるコツ」を教えていただきました。

私にとってアートに触れているひとときは現存の世界から離れ非現実的な世界を楽しむ休息の時間であり、自分自身をみつめる機会を与えてくれるものです。ただ美術館やギャラリー、アートにまつわるイベント、パブリックアートのある場所へ出向かないとアートと出会う機会はほとんどありません。また心に余裕がないとアートというものを楽しむことはなかなかできないのではないでしょうか。

育児をしながら仕事をしているとどうしても毎日の生活に追われ、ゆっくりとアートと向き合う時間が少なくなります。そんな私がアートに触れているときと同じような感覚に陥る瞬間がときどきあります。それは日常に潜んでいる非現実的なものを発見してハッとさせられる瞬間、ワクワクして笑顔になる瞬間…。刻々と過ぎていく時間の中でふと立ち止まり、別の世界へと思考が切り替わるひとときです。例えば道端に落ちている靴を発見したとき。それはとても物悲しく見え、その背景にある物語を想像せざるを得なくなります。また近所のおじさんが自分で塗装した壁の色ムラに美しさを感じたり、何本も並んで建てられた電柱を見て「もしかして一本はFRPで作られた偽物だったりして」と思ったり。アートとは言えないものですが、そんなものを発見して自分なりの視点から観察することが心のちょっとした休息になります。

アートのある場所へ出向くことが難しいときには、自分の身近にある小さな発見を楽しむことを試みてください。そして時間がとれるときにはギャラリーや美術館へ行って、ジワーっと心満たされるゆっくりとした時間を過ごすことができれば、きっとそれは最高の休息になることと思います。


原田京子
フリーペーパー『アートラベル』発行人