アートのコツライブラリー

2008年9月15日月曜日

アートな場を作るコツ

「アートのコツ」は、アートホリックな方々にアートを楽しむコツを教えていただくコーナーです。今回はアニメーションテープス代表の林緑子さんに「アートな場を作るコツ」を教えていただきました。

私は東海地方を中心に、主に個人ベースで制作された短編アニメーション作品の上映会を2000年11月より自主企画しています。制作者が気軽に作品発表を して直に他人の感想を聞くことができ、来場者同士が交流できる場を目指して活動し続けています。上映会を始めたきっかけは、広島で隔年開催されている国際 アニメーションフェスティバルへの参加です。世界の様々な作品を5日間にわたって観ることができるこのイベントは、1985年から現在まで続く国内最大の アニメーション映画祭。初参加した1998年からすっかり虜になり、ここへ関わることでたくさんの元気をもらってきました。映画祭の中で、ある作家の方が 「ただ、観客でいるのではなく作品を本当に好きならばそれを残していくために何が出来るのかを考え行うことも大事」とおっしゃり、自分ができることはなん だろうと考えた結果、たまたま会場にも恵まれたので、地元で小さな上映会を始める事にしました。

上映会を始めた当初は、制作者本人がVHSビデオテープで持参した作品をモニタで上映し、私の司会でそれぞれの方にコメントを聞くという形式張らないもの でした。来場者も10名程度で入場無料のとても小さなイベントです。それから、告知とパンフレットを兼ねるフリーペーパーをイベントの前後に作っていまし た。制作者の知人がほとんどいなかったので、毎回の上映作品を集めるのが大変だったのと、フリーペーパーを制作し配布するのが手間だった思い出がありま す。その頃は、インターネットの通信速度が現在に比べてもっと遅い時代だったので上映会を行うことで、制作者の作品に出会える良い機会にもなりました。そ うやって数回のイベントを行ううちに、大きなスクリーンで映写してみたいと思うようになり思い切って公共スペースを借りての上映会を行いました。パンフ レットやフルカラーのDMを制作し、経費もかかったので思い切って有料イベントにし80名近い来場者を得ました。ただ、私にとっては痛い額の赤字となった のですごくがっかりして、依頼1年半ほど何もしませんでした。その後、様々なきっかけやいろいろな方の温かい手助けがたくさんあって上映会を再開し、今に 至っています。

私にとって上映会を行う意義は、好きなことを通じて社会と関わりそうした中で元気をいただくことです。また、様々なアニ メーションをたくさん観たい、作品の向こう側にいる作者とコミュニケーションを取りたい、そうして、より作品世界を深く味わいたいと考えています。作品を 通して作者のパーソナルがそこに映り育っていくのを観たいのです。作ることは、自分の心や生き方を目に見える形で取り出して観照することでもあると思いま す。生きていく中で、どんな表現でも良いので自分なりに続けていくことは制作物の最初の鑑賞者である自分に対して真摯に向き合う事ではないでしょうか。そ んな風にしている姿をたくさん見たいです。

これまでの集大成として、11月に名古屋大学内で上映会を行います。地域において、アニメー ション制作を学び、作り続けていくにはどうすればいいのかを皆で考える3日間です。それぞれの日を「観せる」「学ぶ」「作る」とテーマ分けし上映と講演や ワークショップ、展示など様々なプログラムをご用意しています。ぜひ、たくさんの方に足を運んでいただければと思います。

■イベントスケジュール
視覚文化をめぐる学際シンポジウム[みんなで育てるアニメーション]
日時:2008年11月1日(土)~3日(月・祝)
会場:名古屋大学野依記念学術交流館(名古屋市千種区不老町)
交通:地下鉄名城線名古屋大学駅2番出口より徒歩7分
参加費:有料1プログラム 学生500円/一般700円、無料プログラムもあり
詳細は→http://www.k5.dion.ne.jp/~mimicry/
mixiコミュ→http://mixi.jp/view_community.pl?id=338534


林緑子
名古屋市出身、アニメーションテープス代表